朝から雪が降り積もる、2021年12月18日のTHE6。今回3度目となる『6LABO Vol.72 栗原の稲藁でつくる、福を迎えるしめ飾り』に、講師として一般社団法人くりはらツーリズムネットワーク(以下くりツー)・栗原市農泊推進協議会の大場寿樹(おおば ひさき)さんをお招きしました。毎年THE6が年末に開催するイベントで、告知をして早々に満席となるほどの人気です。その魅力の一つに大場さんのお人柄もあります。ご自分でも藁好きと話す大場さんに、現在の活動から今後の展望までお話を伺いました。
現在は体験プログラムが主体です。くりはらツーリズムネットワークは栗原市民が集った市民団体で、生業にしている分野を体験プログラムとして提供しています。例えば栗原の食材で作る「地元食」は、僕らが普段から口にしているもの。これを体験プログラムという手段を使ってみなさんに褒めてもらえる、喜んでもらえるものにできたらと思い立ち上げたプロジェクトです。観光や旅行業界は短期のプランが多く、長期滞在してもらうにはどうしたらよいかが課題となっています。自分の生活に照らし合わせて考えると、興味はあってもその後の予定を考えたら1泊や2泊の旅行で精いっぱいなことが多い。そこで、2〜3時間ほどのものであれば参加しやすいのではないかと思い、短時間のプログラムを開いています。
企画は、設立当初の2011年から年間100~150回ほど開催します。くりツ―の会員同士が企画を提案しあったり、会員の家でいただいた料理を体験で企画してみないか提案したりする中で生まれていますね。経済的理由でなくなってしまうものの中には、良いものや価値のあるもの、大事なものがあります。それこそしめ縄は、藁に触れる機会はないけれど、触れてみると面白い。生活に落とし込むことはできないけれど、イベントのような価値を体感できる時間を通して経済性を持たせたらと思います。一部の不都合で無くなりそうなものに意味を与え、少しでも持続できるようにしていきたいですね。
とはいえ、栗原に泊まって地域に滞在してくれる人を増やしたいとも思っています。ただ、くりツーだけで宿泊まで流動させるのは難しいので、行政や関係する団体と新しく栗原市農泊推進協議会を作り、滞在型のプランを計画中です。ここでは事務局と中核法人という立場で運営をしています。
栗原地域の特徴的な建造物に、「長屋門(ながやもん)」と呼ばれるものがあります。長屋門は、もともと農作業をしたり、使用人が暮らしたりする場所でした。それが時代の変化に伴い、物置や子ども部屋、最近ではカフェや事務所として使われるなど、用途が変わってきました。しかし、現在宿泊できる長屋門が無く、旅行で来られた方から「長屋門に泊れたらいいね」といった言葉をいただくことがあります。こうした現状から長屋門で地域の文化を伝えられる宿を作りたいと考え、東京大学の林憲吾研究室の学生に設計をお願いして今年中に着工・オープンを計画している事業を進めています。
十文字商店では普段自分たちが作っているものや、農家の人が合間をぬって作っている流通に出回らないものをECサイトやイベントなどで販売しています。コロナ禍で有効だった方法が、カタログで注文を受けて配達をする仕組み。月に2回オフラインで注文を承り、自粛期間で買い物に行けない方へ向けてお届けしています。売る場所がない生産者と、なかなか買い物に行けない・インターネットを使えない消費者を繋ぎ、売り渡しの機会を作ります。生産者は受注分だけ作るので損失もありません。配達は無料で行っています。(佐藤:かっこいいです!)こうしてフロントエンドでやりとりをしているうちに信用される場面が増え、様々な仕事をいただくようになりました。今は指定管理施設業務の運営を受託したり、民間からの委託やツアーの運営、コンサルティングなど業務の依頼が多いですね。
ひとの暮らしが見える農村地帯が好きです。藁そのものが好きというよりも、藁を使った手仕事や技がかっこいい。辿り着くまでの手段がしめ縄や自転車、ロングトレイルなど、農村にある潜在的価値をクローズアップしていろいろな入口から見せていきたいですね。こういった想いを実行するにはどうしたらよいのかと、試行錯誤の連続です。正解を探すというより、自分たちがやっていることを正解に持っていくという意識です。通常の商売とは若干違うかな。
地域愛があるねとよく言われるのですが、どこの地域もおもしろくて好きなんです。優れているとか、一番だとかの価値観ではなく、ひとびとの暮らしぶりや景観が他とどう違うかを見るのが面白いと感じます。たとえば料理一つを取っても、「はっと(小麦粉を水で練った食べ物)」が「ひっつみ(水でこねた小麦粉をだし汁の中に投げ入れて、具とともに煮込んだもの)」になったり、しめ飾りの形が違ったりするんですよね。僕は栗原で生まれて、子供の頃から見て知っているものが多かったので、視点が栗原にあったというだけ。どこの地域でも、のぞいてみると面白いものですよ。
入口は出来てきたので、今後は自分がコントロールできるバックエンド(利益が上がる商売)の足固めをし、おもしろいと感じるものを仕掛けて、栗原に仕事を作っていきたいというのが野望です。自転車は僕の個人的な興味から始めましたが、農産物のPRでサイクリングを利用して直売所をまわるとか、仕事に結びつけて収益につなげていますね(笑)そういう気持ちでこれからも生業を続けていきたいです。
今回はしめ縄づくりで栗原地域の魅力をお届けしてくれた大場さん。
これからの活動はWEBサイトなどでもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。
くりはらツーリズムネットワーク
現在は体験プログラムが主体です。くりはらツーリズムネットワークは栗原市民が集った市民団体で、生業にしている分野を体験プログラムとして提供しています。例えば栗原の食材で作る「地元食」は、僕らが普段から口にしているもの。これを体験プログラムという手段を使ってみなさんに褒めてもらえる、喜んでもらえるものにできたらと思い立ち上げたプロジェクトです。観光や旅行業界は短期のプランが多く、長期滞在してもらうにはどうしたらよいかが課題となっています。自分の生活に照らし合わせて考えると、興味はあってもその後の予定を考えたら1泊や2泊の旅行で精いっぱいなことが多い。そこで、2〜3時間ほどのものであれば参加しやすいのではないかと思い、短時間のプログラムを開いています。
体験プログラムの企画と栗原市農泊推進協議会
企画は、設立当初の2011年から年間100~150回ほど開催します。くりツ―の会員同士が企画を提案しあったり、会員の家でいただいた料理を体験で企画してみないか提案したりする中で生まれていますね。経済的理由でなくなってしまうものの中には、良いものや価値のあるもの、大事なものがあります。それこそしめ縄は、藁に触れる機会はないけれど、触れてみると面白い。生活に落とし込むことはできないけれど、イベントのような価値を体感できる時間を通して経済性を持たせたらと思います。一部の不都合で無くなりそうなものに意味を与え、少しでも持続できるようにしていきたいですね。
とはいえ、栗原に泊まって地域に滞在してくれる人を増やしたいとも思っています。ただ、くりツーだけで宿泊まで流動させるのは難しいので、行政や関係する団体と新しく栗原市農泊推進協議会を作り、滞在型のプランを計画中です。ここでは事務局と中核法人という立場で運営をしています。
長屋門のみらい
栗原地域の特徴的な建造物に、「長屋門(ながやもん)」と呼ばれるものがあります。長屋門は、もともと農作業をしたり、使用人が暮らしたりする場所でした。それが時代の変化に伴い、物置や子ども部屋、最近ではカフェや事務所として使われるなど、用途が変わってきました。しかし、現在宿泊できる長屋門が無く、旅行で来られた方から「長屋門に泊れたらいいね」といった言葉をいただくことがあります。こうした現状から長屋門で地域の文化を伝えられる宿を作りたいと考え、東京大学の林憲吾研究室の学生に設計をお願いして今年中に着工・オープンを計画している事業を進めています。
プレミアムなものを販売する十文字商店
十文字商店では普段自分たちが作っているものや、農家の人が合間をぬって作っている流通に出回らないものをECサイトやイベントなどで販売しています。コロナ禍で有効だった方法が、カタログで注文を受けて配達をする仕組み。月に2回オフラインで注文を承り、自粛期間で買い物に行けない方へ向けてお届けしています。売る場所がない生産者と、なかなか買い物に行けない・インターネットを使えない消費者を繋ぎ、売り渡しの機会を作ります。生産者は受注分だけ作るので損失もありません。配達は無料で行っています。(佐藤:かっこいいです!)こうしてフロントエンドでやりとりをしているうちに信用される場面が増え、様々な仕事をいただくようになりました。今は指定管理施設業務の運営を受託したり、民間からの委託やツアーの運営、コンサルティングなど業務の依頼が多いですね。
おもしろいと思うものを仕掛けて生業をつくっていく
ひとの暮らしが見える農村地帯が好きです。藁そのものが好きというよりも、藁を使った手仕事や技がかっこいい。辿り着くまでの手段がしめ縄や自転車、ロングトレイルなど、農村にある潜在的価値をクローズアップしていろいろな入口から見せていきたいですね。こういった想いを実行するにはどうしたらよいのかと、試行錯誤の連続です。正解を探すというより、自分たちがやっていることを正解に持っていくという意識です。通常の商売とは若干違うかな。
地域愛があるねとよく言われるのですが、どこの地域もおもしろくて好きなんです。優れているとか、一番だとかの価値観ではなく、ひとびとの暮らしぶりや景観が他とどう違うかを見るのが面白いと感じます。たとえば料理一つを取っても、「はっと(小麦粉を水で練った食べ物)」が「ひっつみ(水でこねた小麦粉をだし汁の中に投げ入れて、具とともに煮込んだもの)」になったり、しめ飾りの形が違ったりするんですよね。僕は栗原で生まれて、子供の頃から見て知っているものが多かったので、視点が栗原にあったというだけ。どこの地域でも、のぞいてみると面白いものですよ。
入口は出来てきたので、今後は自分がコントロールできるバックエンド(利益が上がる商売)の足固めをし、おもしろいと感じるものを仕掛けて、栗原に仕事を作っていきたいというのが野望です。自転車は僕の個人的な興味から始めましたが、農産物のPRでサイクリングを利用して直売所をまわるとか、仕事に結びつけて収益につなげていますね(笑)そういう気持ちでこれからも生業を続けていきたいです。
今回はしめ縄づくりで栗原地域の魅力をお届けしてくれた大場さん。
これからの活動はWEBサイトなどでもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。
その他詳細
大場 寿樹
宮城県栗原市出身・在住。(一社)くりはらツーリズムネッ
トワーク 業務執行理事・事務局長。
1994 年に築館町役場(現・栗原市役所)に入庁。
観光・広報等の業務に従事。2013 年 3 月に退庁し 4 月からくりはらツーリズムネットワークに入社。
年間 150 回以上の観光・ツーリズム事業の企画・運営と PR・デザインを担当。
【受賞歴】
○2015 年度グッドデザイン賞「体験プログラム」
(公益財団法人日本デザイン振興会)
○2016 年度グッドデザイン賞「地元食の本」
(公益財団法人日本デザイン振興会)