今年も6月から12月までの毎週土曜日、村田町で村岡農園を営む村岡次郎さんが、仙台・立町のパン屋「UP!BAKER」前でマーケットを開いています。並ぶのは、畑直送の色とりどりの野菜たち。マーケットの常連さんも、パンを買いに来た方も、通りすがりの方も、足を止める交差点になっています。
せんだいメディアテークにほど近い、定禅寺通りから立町方面に一歩入ったこの場所で、2019年からマーケットを開いている村岡さん。村岡農園で育てる野菜のほとんどが、このマーケットに並びます。バンの荷台に詰め込まれた季節の野菜がナチュラルに美しく陳列される店先に、思わず目を引かれます。
開店は10:00。オープンしてわずか30分ほどでマーケットは賑わい出します。野菜はすべて量り売りで、籠に好きなものを入れて会計をしてもらいます。スーパーでは見かけないような珍しい野菜もありますが、フレンドリーな村岡さんや常連さんが食べ方などをおしえてくれることも。見知らぬ人同士でも、野菜を介してコミュニケーションが自然に発生する、和やかな雰囲気があります。
村岡農園を営む村岡次郎さん
村岡さんが対面販売を始めたのは、農家を始めた2014年当初から。かつて研修していたアメリカで農家が作ったものを直接消費者に販売する「ファーマーズマーケット」を見て、さらに実際に働いたことがきっかけで、対面販売へのこだわりを持ったそう。
「自分の野菜を直接見せる、伝える場所っていうのがアメリカにはあったんですよね。それってすごい大切だと思ったんです。オレゴンでお世話になった農家さんは、30年前くらいから、当初は農家が5、6人ぐらい集まって、ポートランドという市に行って自分の野菜を販売していました。販売しながら消費者に、有機野菜、オーガニックってこういうことなんだよというのを伝えていたんです」。
有機農家が20年、30年と対面販売の取り組みを続けてきたアメリカでは、有機野菜が当たり前のものになっていると村岡さんは言います。
「有機農家の想いが消費者に伝わっていて、有機野菜を買って応援する、自分たちも健康になり、環境にもいいことをしていこうよという仕組みができているんです。一方、日本では、まだまだ広がっていない。やっぱり、実際自分たちで伝えないとと思ったんです。そして、生産者の顔だけでなく、消費者の顔も見える関係を作りたい」。
熱い想いを持って農業に取り組む村岡さん。しかし、マーケットの店頭ではお客さんの対応で忙しそう。「時間帯によってお客さんがいっぱいなので、想いを語るどころじゃなくて、野菜を売らなきゃなと焦っちゃいますね」と笑います。
対面販売は、お客さんから直に野菜の感想を聞けることも醍醐味。「栗なんかは見た目では良し悪しがわかりづらく、虫が中に入っていたと指摘をいただき反省したこともあります。でも、ここでお客さんとお互いに勉強しあって、レベルがどんどん上がっていっている感じはしますね」。
葉物類など、鮮度重視のものは朝採りで、力強い大地の恵みをマーケットに届けてくれる村岡さん。6月の青梅が7月は完熟梅に。夏場はトマト。カラフルな、スーパーでは見かけないような多様な種類のトマトがずらりと顔を見せます。
夏のシーズンは目にも鮮やかにカラフルなトマトがずらり
冬野菜も得意とのことで、秋冬は、かぶ、大根、里芋、さつまいもなどの根菜系がメインに並びます。
根菜類が出てくる秋のマーケットの様子
麻や籠などの自然素材を使った立体的なディスプレイは、研修で訪れたアメリカのファーマーズマーケットを参考にしているそう。「ポートランドはやっぱり特にすごかったです。まねしていますね」。
米国・ポートランドのファーマーズマーケット(写真提供:村岡さん)
農家が対面販売するマーケット、日本では東京・青山で毎週末開催されている「青山ファーマーズマーケット」が有名です。しかし、毎週のように行われているマーケットは、仙台・宮城にはまだほとんどありません。「マーケットに行って、いい野菜を買って、おいしいご飯を食べる。マーケットを文化的に日常の一部として取り入れる、そんなふうになったらなと思います」と村岡さん。育てた野菜を子どもたちが食べてくれること、食のことをよく知っている料理人の方がわざわざ買いに来てくれることは、自信になると言います。
ニンニクの花など、無造作に活けられた村岡農園の野菜の花たち
農業を始める前、20歳のころに有機農業に出会ったという村岡さん。「宇根豊さんという有機農業界では有名な方が、百姓が自然を作るということを言っていて。今、当たり前のように見ている美しい農村風景も、昔から百姓が田畑や野山に手を加えて維持してきた。百姓が食べ物を育てるだけではなく風景も作れるっていうのは、かっこいいと思ったんです」。
そうして、農薬をかけてほかの生き物を殺したりせずに、食べ物を作り、豊かに生きられるという考えや手法を知り、またアメリカの有機農業や自然観に触れ、なるべく手をかけずに、ありのまま、多様性を軸に営みを続けて来られました。
「でもそれが貴重なものではなく、当たり前になるのが大切なんですよね」と、村岡さんは強調します。「野菜を買いに行く先に、八百屋さんに加えて農家という選択肢もある。そうなっていけば、社会がまた変わっていくんじゃないかなと。そのためにも、農業というものがどんどん廃れていく現状の中で、自分たち農家が文章でもなくメディアを介してでもなく対面で、直接自分の思いを伝えていきたい」。
大地に社会に、大きな生のつながりの中で、命に満ち溢れた野菜を作り、届けてくれる村岡さん。土曜日に開かれているマーケットを、ぜひ訪れてみてください。
街中のファーマーズマーケット
せんだいメディアテークにほど近い、定禅寺通りから立町方面に一歩入ったこの場所で、2019年からマーケットを開いている村岡さん。村岡農園で育てる野菜のほとんどが、このマーケットに並びます。バンの荷台に詰め込まれた季節の野菜がナチュラルに美しく陳列される店先に、思わず目を引かれます。
開店は10:00。オープンしてわずか30分ほどでマーケットは賑わい出します。野菜はすべて量り売りで、籠に好きなものを入れて会計をしてもらいます。スーパーでは見かけないような珍しい野菜もありますが、フレンドリーな村岡さんや常連さんが食べ方などをおしえてくれることも。見知らぬ人同士でも、野菜を介してコミュニケーションが自然に発生する、和やかな雰囲気があります。
村岡農園を営む村岡次郎さん
対面販売で想いを伝える
村岡さんが対面販売を始めたのは、農家を始めた2014年当初から。かつて研修していたアメリカで農家が作ったものを直接消費者に販売する「ファーマーズマーケット」を見て、さらに実際に働いたことがきっかけで、対面販売へのこだわりを持ったそう。
「自分の野菜を直接見せる、伝える場所っていうのがアメリカにはあったんですよね。それってすごい大切だと思ったんです。オレゴンでお世話になった農家さんは、30年前くらいから、当初は農家が5、6人ぐらい集まって、ポートランドという市に行って自分の野菜を販売していました。販売しながら消費者に、有機野菜、オーガニックってこういうことなんだよというのを伝えていたんです」。
有機農家が20年、30年と対面販売の取り組みを続けてきたアメリカでは、有機野菜が当たり前のものになっていると村岡さんは言います。
「有機農家の想いが消費者に伝わっていて、有機野菜を買って応援する、自分たちも健康になり、環境にもいいことをしていこうよという仕組みができているんです。一方、日本では、まだまだ広がっていない。やっぱり、実際自分たちで伝えないとと思ったんです。そして、生産者の顔だけでなく、消費者の顔も見える関係を作りたい」。
熱い想いを持って農業に取り組む村岡さん。しかし、マーケットの店頭ではお客さんの対応で忙しそう。「時間帯によってお客さんがいっぱいなので、想いを語るどころじゃなくて、野菜を売らなきゃなと焦っちゃいますね」と笑います。
対面販売は、お客さんから直に野菜の感想を聞けることも醍醐味。「栗なんかは見た目では良し悪しがわかりづらく、虫が中に入っていたと指摘をいただき反省したこともあります。でも、ここでお客さんとお互いに勉強しあって、レベルがどんどん上がっていっている感じはしますね」。
季節ごとの畑の表情を感じて
葉物類など、鮮度重視のものは朝採りで、力強い大地の恵みをマーケットに届けてくれる村岡さん。6月の青梅が7月は完熟梅に。夏場はトマト。カラフルな、スーパーでは見かけないような多様な種類のトマトがずらりと顔を見せます。
夏のシーズンは目にも鮮やかにカラフルなトマトがずらり
冬野菜も得意とのことで、秋冬は、かぶ、大根、里芋、さつまいもなどの根菜系がメインに並びます。
根菜類が出てくる秋のマーケットの様子
麻や籠などの自然素材を使った立体的なディスプレイは、研修で訪れたアメリカのファーマーズマーケットを参考にしているそう。「ポートランドはやっぱり特にすごかったです。まねしていますね」。
米国・ポートランドのファーマーズマーケット(写真提供:村岡さん)
農家が対面販売するマーケット、日本では東京・青山で毎週末開催されている「青山ファーマーズマーケット」が有名です。しかし、毎週のように行われているマーケットは、仙台・宮城にはまだほとんどありません。「マーケットに行って、いい野菜を買って、おいしいご飯を食べる。マーケットを文化的に日常の一部として取り入れる、そんなふうになったらなと思います」と村岡さん。育てた野菜を子どもたちが食べてくれること、食のことをよく知っている料理人の方がわざわざ買いに来てくれることは、自信になると言います。
ニンニクの花など、無造作に活けられた村岡農園の野菜の花たち
有機農業やマーケットを暮らしの中に
農業を始める前、20歳のころに有機農業に出会ったという村岡さん。「宇根豊さんという有機農業界では有名な方が、百姓が自然を作るということを言っていて。今、当たり前のように見ている美しい農村風景も、昔から百姓が田畑や野山に手を加えて維持してきた。百姓が食べ物を育てるだけではなく風景も作れるっていうのは、かっこいいと思ったんです」。
そうして、農薬をかけてほかの生き物を殺したりせずに、食べ物を作り、豊かに生きられるという考えや手法を知り、またアメリカの有機農業や自然観に触れ、なるべく手をかけずに、ありのまま、多様性を軸に営みを続けて来られました。
「でもそれが貴重なものではなく、当たり前になるのが大切なんですよね」と、村岡さんは強調します。「野菜を買いに行く先に、八百屋さんに加えて農家という選択肢もある。そうなっていけば、社会がまた変わっていくんじゃないかなと。そのためにも、農業というものがどんどん廃れていく現状の中で、自分たち農家が文章でもなくメディアを介してでもなく対面で、直接自分の思いを伝えていきたい」。
大地に社会に、大きな生のつながりの中で、命に満ち溢れた野菜を作り、届けてくれる村岡さん。土曜日に開かれているマーケットを、ぜひ訪れてみてください。
その他詳細
村岡農園
マーケット(野菜市)2022年度開催予定
日時:6〜12月の毎週土曜日 10:00頃〜15:00頃まで
場所:仙台・立町「UP!BAKER」前
※最新情報は村岡農園Facebookをご覧ください。
記事を書いた人
大河原 芙由子
コーディネーター
大学で社会学と政治学を学び、卒業後はサステイナブルな社会づくりをめざし、自然エネルギー業界で働く。結婚を機に、舞台制作の道に。現在は、文化芸術と社会をつなぐ仕事もしながら、#アート #カルチャー #ソーシャル #サステイナブルな活動を掛け合わせていくことを実践中。庭を楽しむ暮らしが目標。